まず偏食という言葉を正しく理解しているでしょうか?
人間には好き嫌いがあることは普通のことですが、好き嫌いが極端に多く、食べられる食品が限定していることを偏食といいます。
偏食をそのままにしていると人格形成に問題がでると言われ、親なら悩んでしまうのも当たり前です。しかし、偏食はいろいろな食べ物を経験する機会が少なく、食べ物に適応できていないだけ。また、比較的に幼児期に起こりやすく、成人するにつれて減っていくのも特徴ですから、心配はいりません。
ミルクから離乳食に切り替わった時には、味が嫌で赤ちゃんは食べ物を出してしまうのではなく、唇や舌への慣れない感覚が不快で出してしまいます。それが幼児になると、脳が発達して、母乳の味で慣れ親しんだ甘味や塩味、うまみは受け入れられますが、それ以外の苦味や酸味は出してしまいます。苦味と酸味は、食のさまざまな体験を通して、徐々に食べられるようになっていくものです。
偏食にもいろいろ種類があって食品に対する偏食、料理の偏食、味の偏食に分けられますが、どれも体験が少ないことで起こること。それに、例えば小松菜がダメでもアスパラを食べるといった栄養上で代替えをすればこの時期は無理に食べさせなくても問題はないので、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。
また、食べない理由も2つの時期で問題の内容が異なるため、対処法も異なります。
乳児の場合は、歯が生えそろっていないので、うまく噛めなくて食べない場合があります。食材や調理の仕方が年齢にあっているのかチェックしてみましょう。上下が20本生えそろう2歳半すぎになればぐっと食べやすくなるはず。
幼児の場合は生活リズムがしっかりできているかが大きく関わります。不規則な時間の食事はホルモンのバランスをくるわし中枢神経の働きを下げてしまい、食欲が落ちることがあるので、生活リズムを整えましょう。
他にも急に偏食になった場合は、体調や心の問題を疑ってみましょう。身体的、精神的なことでも食欲はぐっと落ちてしまいます。
保育園でも、1~2歳ぐらいで偏食をしていたとしても、“卒園までに食べられるようになる“といった見通しをもち、焦らずにゆっくりと食事指導をしていきます。
4歳ぐらいになったら、がんばろうとする力が育つ時期であり、パパやママの言葉や友だちの励ましで、みんなの期待を背負ったうえに、自分自身の好奇心もわいてきて、「食べてみるから見ててね!」といって今まで食べられなかったものに、自分からチャレンジすることがあります。
そのようなチャレンジ精神を高めるためには、励ましの声掛けだけでなく、自分で苦手な野菜を栽培してみたり、苦手な食べ物を使って料理を作ってみたりといった環境を整えてあげると、少々苦かったり、固かったりしても、料理は味覚だけで食べるのではなく、“思い”で食べることができるようになります。
“思い”で食事をするとは、こんなにやったからおいしいはずといった自分のがんばりや大切に育てた新鮮な野菜だからといった愛情が料理の価値を上げるエッセンスになるということ。
よりおいしく感じられるだけでなく、感謝の気持ちも持てるようになります。
これが持てると、食の時間を自分に豊かにすることができる力がつくので、楽しい体験で育みましょう。