子どもたちにとって、食事は心身の成長を支える大切な要素であると同時に、味覚や感性を育む重要な経験でもあります。特に幼児期は味覚をはじめとする感覚が大きく発達する時期です。この時期に「食べたい」「楽しい」と感じられる体験が増えることで、子どもたちの感性は豊かになり、健康的な食習慣の基礎が培われます。そのため、食材選びや味付けに工夫を凝らし、子どもたちが食べることを楽しめる環境を作ることが大切です。以下に、具体的な工夫についてまとめました。
1. 食材選びのポイント
• 新鮮な旬の食材を選ぶ
新鮮で旬の野菜や果物は栄養価が高く、味や香りも豊かです。特に幼児期は腸管が未熟でお腹を壊しやすいため、鮮度の高い安全な食材を選ぶことが重要です。また、旬の食材を取り入れることで、自然の味わいを感じる体験を増やし、食事の楽しさを深めることができます。
• さまざまな食感を取り入れる
咀嚼力を養うために、柔らかいものだけでなく歯ごたえのあるものやシャキシャキしたものなど、いろいろな食感の食材を取り入れましょう。乾物や豆類、海藻類などは栄養価が高く、家庭ではあまり登場しないことも多いですが、給食では積極的に取り入れることで新たな食体験を提供できます。
• 色彩を意識する
見た目の楽しさは食欲を引き立てる大切な要素です。赤・黄色・緑といった色とりどりの食材を使い、彩り豊かなメニューを作ることで、子どもたちは「おいしそう!」というポジティブな気持ちで食事を楽しむことができます。
2. 味付けの工夫
味付けは、子どもたちが安心しておいしく食べられる献立作りの鍵となります。
(1) 薄味を基本にする
幼児期の子どもは、大人に比べて舌の味蕾(みらい)の数が多く、味を感じやすい敏感な状態です。そのため、大人が「薄い」と感じる程度の味付けでも、子どもにとっては十分に素材の旨味や甘みを感じられる濃さです。塩分を控えた薄味を基本にすることで、健康的な味覚を育みます。
(2) 旨味を活かす
塩分を控えても、だしの旨味を活用することで、味に深みを持たせることができます。かつお節や昆布、煮干しなどからとっただしを使うほか、野菜の旨味を引き出す調理法も効果的です。例えば、玉ねぎやトマトをじっくり炒めて甘味を引き出すことで、塩分を抑えた味付けでも満足感を得られます。
(3) 香辛料や薬味を上手に使う
にんにくや生姜などの薬味は、肉や魚の臭みを消し、香りで食欲を増進させる効果があります。また、辛さのないカレーパウダーを少量加えることで、食材の風味を引き立てることもできます。ただし、これらは刺激が強いことがあるため、加熱して風味を和らげたうえで、少量を使うようにしましょう。
• 注意点
ハーブ類は香りが強く、子どもにとって刺激が強い場合があります。使う際はごく少量にとどめ、子どもの反応を見ながら調整しましょう。
(4) 調味料のバリエーションを増やす
同じ食材でも、味付けを変えるだけで子どもが食べやすく感じることがあります。例えば、苦手な野菜を醤油ベースの煮物にしたり、甘味噌で和えたりと、さまざまな味付けを試すことで、新しい発見につながることがあります。
3. 五感を刺激する食事体験
子どもが「おいしい」と感じるのは、味覚だけではありません。見た目、香り、食感、さらには食べる音も食事を楽しむための大切な要素です。例えば、野菜をカラフルな形に切ったり、パン粉を使ってカリッとした食感を加えたりする工夫で、子どもたちの興味を引き出します。さらに、「いい香りだね」「シャキシャキして楽しいね」といった声かけをすることで、子どもの気づきを促し、食事をより楽しいものにできます。
4. 楽しい雰囲気を作る
給食の時間は、食材や味だけでなく、雰囲気も重要です。保育士が「おいしいね」と笑顔で食べる姿を見せたり、友達と一緒に食べる楽しさを伝えることで、食事に対するポジティブな感情が育まれます。また、食材の名前や調理法について話をすることで、子どもたちの食への興味をさらに広げることができます。
まとめ
食材や味付けの工夫は、子どもたちの成長を支え、食事の楽しさを感じさせる重要な要素です。新鮮で多様な食材を使い、薄味を基本に旨味や香りを活かした味付けを心がけましょう。また、五感を刺激する調理や楽しい雰囲気作りを通じて、食事が「楽しい」「また食べたい」と感じられる体験を提供することが大切です。一つひとつの工夫が、子どもたちの豊かな味覚や感性を育み、健やかな成長につながっていきます。